Works

中小企業診断士がつくったアプリの作品集

How I build / Rules どの仕事にも持ち込んでいる決めごとと、その理由

開発ルール

作るとき・進めるとき・伝えるときに迷ったら、どちらを選ぶか

うまくやる方法は、ほとんど決めていない。
決めてあるのは、迷ったときにどちらを選ぶかだ。

仕事を始めるたびに、AI に最初に読ませている文書がある。書いてあるのは仕事の進め方だけで、何をどう作るかは書いていない。案件が変わっても、使う言語が変わっても、同じ文書を使う。以下に、その中身と、そう決めた理由を並べる。

決めごとのほとんどは、判断に迷ったときにどちらを選ぶかを、前もって決めたものだ。うまくいくコツを書いたものは少ない。選ぶ向きが決まっていれば、急いでいても疲れていても、同じほうを選べる。その場で毎回考え直すより、結果がぶれない。

並びは仕事の順にした。何を作るかを決める → 計画を詰める → 進める → 伝える → 自分の判定を疑う → 終わったあとに残す。この作品集そのものの作り方(データの持ち方や、画面の撮り方など)は、読む人の役に立たず、ほかの仕事にも持ち出せないので、決めごととしては 1 つも載せていない(根拠に挙げた実例には、この作品集を作ったときのものもある)。

これは何か
AI に毎回読ませている設定文書を、読む人向けに言い換えたもの。原文には道具の名前やファイルの置き場所が入るので、公開していない
書いていないこと
手元の環境の話(ファイルの置き場所・使っている道具の名前・接続先)と、この作品集そのものの作り方
数字について
「いま何件ある」とは書いていない。載せたのは日付を添えた過去の実測だけで、あとから測り直してはいない

載せているのは進め方だけ。技術の選び方や設計の作法は扱わず、決め方・進め方・伝え方の決めごとに絞った

01

何を決めているのか

決めごとは、どれも「迷う場面」と「そのときに選ぶほう」の組でできている。判断が割れたときにどちらへ進むかを、先に決めておく。下の表に、よく起きる 6 つの場面と、それぞれで選ぶほうを並べた。

迷う場面 ついやりがちなこと 先に決めてあること
何を作るかが固まっていない ついやりがちとりあえず作りはじめて、走りながら決める 決めてある誰のために作るかを 1 文で書けるまで、作りはじめない
2 回試しても直らない ついやりがちもう 1 回だけ試す 決めてある手を止める。何が起きているかを報告して、判断を仰ぐ
自分で作った検査が、良い数字を出した ついやりがちそのまま根拠に使う 決めてある仮説として扱う。外で実際に測って確かめるまで、結論にしない
相手の期待と、手元の反証がぶつかった ついやりがち受け取りやすい形に整えてから出す 決めてある反証を、弱めずに先に出す
専門用語に説明を付けるか迷った ついやりがち相手は知っているはずだと考えて省く 決めてある迷ったら説明を添える
2 つの決めごとが食い違う ついやりがち両方の顔が立つように、間を取って書く 決めてある一方を選ぶ。選ばなかったほうには「整理が要る」と書き残す
「ついやりがちなこと」も、悪い判断とは限らない。状況によってはそちらが正しい。決めてあるのは、状況が読めないときにどちらを選ぶかだけ。

ここから先は、決めごとを仕事の順(作りはじめる前 → 進めているあいだ → 伝えるとき → 終わったあと)に、6 つの節に分けて並べた。

02

何を作るかを決める

作る手間が下がったので、差は何を、どんな考えで作るかでつくようになった。作れること自体は、もう強みにならない。この節の決めごとは、どれも手を動かす前に書き終えておかないと役に立たない。

誰のためかを 1 文で言えるまで、作りはじめない

採らなかった案幅広い人が使えるように作る

どんな人が使い、それを見て何をするのか。これを 1 文で書けるまで作りはじめない。目に見える困りごと(作業を速くしたい)で止めず、その先で何を得て、どう楽になるのかまで書く。

「みんな向け」に作ると、誰にも響かない。幅を持たせるほど一つひとつの機能が平均的になり、わざわざ選ぶ理由がなくなる。尖らせたものは後から広げられるが、平均的に作ったものを後から尖らせることはできない。

作る前に、完成したときの告知文を書く

採らなかった案作りながら、どこまでやるかを決める

作りはじめる前に、完成したときの告知文と、よく聞かれそうな質問への答えを書く。そこに書けた価値だけを作り、書けなかったものは作らない。作る範囲は放っておくといくらでも広がるので、どこまで作るかを先に決めておく。

作りながら決めると、「作れるかどうか」で判断しがちになる。けれど、作れる機能を足すことと、価値を足すことは別の話だ。告知文を書き終えたら競合を見て、選ばれるにはどこまでの品質が要るかを決める。誰も作っていない分野なら、品質は高くなくてよい。

優先順位は、迷ったときにそのまま使える形で先に決める

採らなかった案そのつど、いちばん良いほうを選ぶ

何を優先するか(速さ・簡潔さ・機能の多さ・情報を外に出さないこと)を、「速さと機能がぶつかったら速さを取る」という形で先に書いておく。迷ったときに、そのまま当てはめられる細かさで書く。「品質を大事にする」のような書き方では、ぶつかったときに何も決まらない。

「そのつど良いほうを選ぶ」と、選ぶたびに答えが変わる。要望を全部聞けば、どれも中途半端になり、結局どれも選ばれない。

知らない分野では、自分の考えで設計する前に定石を調べる

採らなかった案手を動かしながら覚える

初めて使う技術や初めての分野では、まず標準的なやり方、実際に動いている例をいくつか、作り手が薦めるやり方を読む。選べる手を増やしてから設計する。調べものを分担させるときも、その分野に詳しい役に加えて、定石を並べるだけの役を必ず 1 つ置く。

「分からない問題」と「知らない手法」は違う。分からない問題は、試行錯誤すれば解ける。知らない手法は、選択肢に入っていなければ何回試しても出てこない。手を動かして埋まるのは前者だけなので、後者は先に調べるしかない。

同じ理由でうまくいかなかった試みをやめる前に、同じ材料の別の使い方を 3 つ挙げてから決める。駄目だったのが考え方そのものなのか、使い方だけなのかは、並べてみないと分からない。

03

計画の詰め方

作るものが決まってから、作りはじめるまでの詰め方。ここでは、4 つの段の順番そのものを決めごとにしている。目的と制約 → 案を 2〜3 個比べる → 1 問ずつ確かめる → 要らないものを削る、の順に進む。順番を入れ替えると、後の段で決めたことに前の段が引きずられる。

「どう作るか」より先に「なぜ作るか」を決める

採らなかった案作り方から詰めて、目的はあとから言葉にする

計画の 1 段目では、目的と制約、それに何が揃えば成功と言えるかを確かめる。作り方の話は、その後にする。

作り方から入ると、目的が「その作り方でできること」まで縮んでしまう。しかも、縮んだことは後から読んでも分からない。制約に合わせて削ったのか、目的がもともとその程度だったのか、書いた本人にも見分けがつかなくなる。

案を 2〜3 個並べて、比べてから 1 つに絞る

採らなかった案最初に思いついた案を詰めていく

1 案だけを詰めると、その案が良いのか、最初に浮かんだだけなのかが分からない。並べるのは、選ぶためではなく、選んだ理由を残すためだ。比べた記録があれば、後で前提が変わったときに、どの判断を見直せばよいかが分かる。

ただし 2〜3 個で止める。案を増やしても良くなるとは限らず、比べること自体が目的になってしまう。

分からないことは推測で埋めず、1 問ずつ聞く

採らなかった案分からない点をまとめて 1 度に確認する

要件・制約・優先度にあいまいな点があれば、推測で進めずに確かめる。ただし、聞くのは一度に 1 問だけ。選択肢の形にできるなら、選んでもらう。

まとめて聞くと、答える側は全部を頭に入れてから答えることになり、結局いちばん簡単な質問にしか答えが返ってこない。1 問ずつなら、前の答えを踏まえて次の質問を変えられる。まとめて聞くと、手間は答える側に寄る。

「あとで要るかもしれない」ものを作らない

採らなかった案拡張しやすいように、先に受け口を作っておく

計画の最後の段では、削る。いま要らない機能と、いま要らない拡張の余地を落とす。

先回りして作った受け口は、いざ要るときには要件が変わっていて、たいてい合わない。合わないまま残っていると、次に触る人はそれを前提だと思って設計してしまう。使われない受け口は、無いより害が大きい。

テストの計画を、開発計画の中に入れる

採らなかった案作ってから、必要そうなところにテストを足す

新しく作るときや大きく作り替えるときは、何をどの層で検査するかを計画のうちに決める。部品ごとの検査、部品をつないだ検査、最初から最後まで通す検査を、どんな割合にするか。テストを書く前に、動かさなくても機械がコードを読むだけで弾ける誤りはどれか。

後から足したテストは、いま書いたコードが通るように書かれてしまう。それでは実装を書き写しただけで、検査にならない。

04

進めているあいだの決めごと

作業を進めているあいだの決めごと。どれも「うまくいっていないことを、うまくいっているように見せない」ためにある。止まる、言う、選ぶ。どれも、黙って進めるより気まずいほうを、あえて選んでいる。

始める前に成功条件を書き、2 回で止める

採らなかった案できるところまでやってから、どこまでできたかを報告する

始める前に「何が揃えば完了か」を 1〜3 行で書く。2 回試しても満たせなければ、そこで止めて状況を報告する。回数を先に決めておくのが要点で、その場で決めると、たいてい「もう 1 回」になる。

成功条件が無いと、止めどきも分からない。「もう少しで動きそう」と思ったまま、動かない時間がいちばん長く続く。

長い作業に入る前に「これは長い」と言う

採らなかった案とりあえず始めて、苦しくなってから相談する

大きな作業の前に、長くなることを伝え、分けて進める案を出す。途中で余力がなくなりそうなら、無理に続けず、いったん要点をまとめて区切り直す

限界に近い状態で続けると、質が落ちるうえに、落ちたことに本人が気づけない。気づけないことは報告もできないので、始める前に言っておくしかない。

食い違う 2 つを、足して 2 で割らない

採らなかった案どちらの顔も立つように、間を取って書く

今ある決めごとと、いま必要なやり方がぶつかったら、どちらか一方を選び、選んだ理由を書く。選ばなかったほうには「整理が要る」と書き残す。

両方を立てるように書くと、矛盾は消えないまま見えなくなる。次に触る人は、2 つが食い違っていることを知らないまま、どちらか片方だけを守ってしまう。

長い作業では、区切りごとに済んだ分と残りを出す

採らなかった案全部終わってからまとめて報告する

区切りを越えるたびに、済んだことと残っていることを短くまとめる。読む人のためでもあるが、いちばんの狙いは、途中で方向がずれたときに戻れる地点を作ることにある。

最後にまとめて出すと、ずれていたときに全部やり直しになる。

自分の好みより、その場の慣習に従う

採らなかった案自分が良いと思う書き方に揃える

書式や書き方の決まりは、良し悪しより揃っていることのほうが効く。そこに既にあるやり方に合わせる。異論があれば、勝手に変えずに、言葉にして伝える。

自分 1 人で全部を書くなら、どちらでもよい。後から誰か(未来の自分を含む)が読むなら、揃っていないこと自体が、後々まで残る手間になる。

省いたことや飛ばしたことがあれば、「完了」と言わない

採らなかった案ほぼ終わっているものは、完了として報告して補足を添える

飛ばしたところや確かめきれていないところが 1 つでもあれば、「完了」とは言わない。エラーは隠さず、失敗は目立つように報告する。「おおむねできています」と書くと、どこができていないのか読む人に分からない。

これはいちばん破りやすい決めごとでもある。報告する側は作業を終えたいし、受け取る側も「終わった」と聞きたい。どちらも「完了」を望んでいるので、都合の悪い事実だけがはじき出される。

最新版かどうかを、自分の記憶で判断しない

採らなかった案知っている範囲で最新のものを使い、違っていたらあとで直す

フレームワークや実行環境の最新版は、覚えている知識で決めず、その場で一次情報(作り手自身が出している情報)を調べて決める。世代が 1 つずれると、使える書き方も推奨されるやり方も変わるので、気づかないうちに古い作り方が混ざる。

AI に書かせるときは、とくに気をつけている。AI は、学習した時点の「最新」を今の最新だと思って書く。だから最新版の一覧を別に用意し、AI の知識よりそちらを優先させている。一覧に無いものは、そのつど調べてから使う。

効く場面世代をまたぐと、壊れ方が分かりにくい。動かなければすぐに気づくが、動くのに古いやり方で書かれたものは、レビューでも見落とす。

05

伝え方を決める

人が横で見ていないあいだに進む作業が増えた。読む人が実際に目にするのは、終わったときの報告と、途中で届く質問だけになる。この節の決めごとは、どれも「それだけを読んで意味が通るか」を基準にしている。

報告は、前提の 3 行から始める

採らなかった案経過を全部見せて、読む人に判断してもらう

作業の中身より先に、「何を頼まれたか」「何をしたか」「判断してほしいことはあるか」の 3 行を書く。判断が要らなければ「なし」と書く。頼まれていない作業(自動で動いたものなど)なら、何がきっかけで動いたのかを書く。

経過を全部見せても、読む量が増えるだけで、判断に使える情報は増えない。読む人は、次に自分が何をすればよいかを知りたい。

専門の外の言葉には、その場で言い換えを添える

採らなかった案用語集を別に用意して、そこを見てもらう

専門用語には、括弧で 1 行の言い換えを付ける。技術の話には、それが仕事や運用にどう影響するかを 1 文添える。略語は、初めて出たところで元の言葉に開く。

別の場所に置いた説明は、まず開かれない。説明は、その場に書かないと読まれない。

「知っているはず」で省かない

採らなかった案相手の知識を見積もって、要らなそうな説明を省く

道具の名前、設定の名前、社外のサービスの名前は、1 つの報告の中で初めて出たときに 1 回だけ、「何をするものか」「なぜ今出てきたか」を添える。添えるか迷ったら、添える。

「知っているはず」は書き手の主観で、それが外れたときにだけ、相手が困る。長い作業では、前に説明したかどうかを正確には追えない。だから「初めて出たとき」は、1 つの報告の中で数える。

選ばせる前に、選んだ後どうなるかを書く

採らなかった案選択肢を、短い名前だけで並べる

質問には「なぜ今これを聞くのか」を 1 文入れる。選択肢ごとに、選ぶと何が起きるかを平易な言葉で書く。取り消せるかどうかや、費用・時間に差があるなら、それも書く。おすすめがあれば先頭に置き、その理由を 1 行添える。

選択肢を短い名前だけで並べても、意味は書いた本人にしか通じない。背景を書かずに選ばせると、選ぶ側は作業の中身を推測するしかない。

中身の代わりに置かれる言葉を使わない

採らなかった案具体を持っていないところは、それらしい言い方で埋める

「包括的な」「見ていく」「浮き彫りになっている」のように、中身が無くても書けてしまう言葉を一覧にしてあり、文章を出す前に照らし合わせる。ただし消すだけでは穴があくので、数字・事実・自分の判断に置き換える。

置き換える中身を持っていなければ、その文は書かない。持っていない中身をこしらえれば、それは捏造になる。書かないほうがまだ正しい。

出す直前に、1 回だけ読み返す

採らなかった案書きながら整えて、書き終えたら出す

報告や質問を出す直前に、1 回だけ自分に問う。「作業を見ていない人がこれを読んで、意味と次にやることが分かるか」。分からないところがあれば、前提を書き足してから出す。

書いている最中は、自分が作業を全部見ているので、この問いは当てられない。書き手が読む人の立場に立てるのは、出す直前の一度だけ。だから、読み返すのはそのときと決めてある。

06

自分の判定を疑う

自分で作った検査や見立てを、そのまま判定(進めるか止めるかの決め手)にしてしまう。これがいちばん危ない。実際にこれで間違えたので、決めごとにしてある。

自分の中だけで回る輪

  1. 手元の理屈で見立てを作る
  2. その見立てを確かめるために、自分で測り方を作る
  3. 出た数字を、自分の理屈で読み解く
  4. 「方向性は合っている」で締める

よく考え直しても、この輪からは出られない

外で確かめられるもの

  • 本番で実際に測った値
  • 実際に走らせたコマンドの出力
  • 人が目で確かめた事実
  • 一次資料(元の記録や公式の文書)

進めるか止めるかは、こちらだけで決める

破線は「繋がっていない」の印。自分の中だけで回る輪は、注意が足りないせいで閉じているわけではない。だから注意を増やしても抜け出せない。外で確かめられるものに当てるしかない。

自分で作った測定を、判定に使わない

採らなかった案もっと注意深く見直してから信じる

手元で作った測定(試算、模擬の実行、自作の採点)は、仮説として扱う。進めるか止めるかは、外で実際に測った値、実際に動かした出力、人が確かめた事実をよりどころにして決める。数字を出すときは、それが実測なのか仮説なのかを書き添える。

同じ間違いを繰り返す原因は、注意不足ではなく、自分の推論を自分の推論で確かめていることにある。これでは輪が閉じたままで、「もっとよく考える」では抜け出せない。外の事実に当てて確かめるしかない。

実測(2026-08-25)自動の点検が「読めない画像が 20 件ある」と出したとき、原因を見立てだけで決めていた。実際に測ると、原因は別だった。しかも調べる途中で、設定を書いた場所が間違っていて、エラーも出ずに無視されていたことが見つかった。正常に動いているあいだは、表に出てこない壊れ方だった。

信じる前に、その測定を信用してよい条件を書く

採らなかった案数字が出てから、妥当かどうかを考える

数字を根拠にする前に、「この測定は〇〇のときだけ信用してよい」と書いておく。その条件を確かめられないなら、その数字で判定はしない。毎回確かめるのは 3 つ。どんな対象を測ったのか。それは本番で効いてくる対象か。別の測り方でも同じ結果が出るか。

数字が出てから考えると、欲しい結論に合う理由のほうが先に見つかる。自分で弱点を書いておきながら、それでも数字を出して結論に寄せたくなったら、そこで立ち止まる。

検査役の結論は、記録で裏を取ってから採る

採らなかった案検査役を増やして、多数決で決める

検査役(作業の結果を点検させる別の AI)の指摘は、2 つに分けて確かめる。食い違いが本当にあるか。あるなら、どちらが間違っているか。前者は機械でも分かるが、後者は元の記録を見ないと決まらない。

どちらが間違っているかを取り違えたまま直すと、正しかったほうを壊してしまう。検査役の数を増やしても、この向きは決まらない。増やすより、元の記録に当てる。いつもの検査 1 回は、毎回通す。それ以上に別の目を足すのは、大事な判断のときだけにする。何にでも検査役を重ねると、結果は変わらないのに手間だけが倍になる。

実測(2026-08-31 と 2026-09-01)指摘された食い違いは本当にあったのに、どちらが正しいかが逆だった例が 2 件あった。1 件は「これは配布物から外すべきだ」という結論のほうが誤りで、正しくは古い注記を直すことだった。もう 1 件は元のデータが正しく、直すべきは検査のほうだった。

良い報せと悪い報せを、同じ強さで出す

採らなかった案相手が受け取りやすい形に整えてから出す

期待されている結論でも、それに反する事実があれば、はっきり言う。悪い報せは、和らげず、脚注に回さず、後回しにもしない。自分が作ったものも、他人が作ったものと同じ厳しさで疑う。

相手の仮説だから支持する。自分が作ったから信じる。どちらも、同じ種類の身びいきになる。「たぶん大丈夫」「方向性は合っている」で締めたくなったら、そこで立ち止まる。受け取りやすく整えたぶんだけ、判断に要る情報は減る。

07

終わったあとに残すもの

作業が終わったら、わかったことを種類ごとに、決まった場所へ書き出す。整理のためではない。試行錯誤の経過を抱えたままだと、次の判断が鈍る。結論だけを書き出して、経過は手放す。

わかったこと 書き出す先 誰が決めるか
試行錯誤の経過・途中の判断 書き出す先作業の記憶として残す場所 決め方確認を取らずに残す
繰り返し使える決めごと・制約 書き出す先その仕事の決めごとの文書 決め方書き足す案を出して、確認を取る
ほかの仕事にも効きそうな設定 書き出す先すべての仕事に効く設定へ上げる 決め方提案だけする(勝手には上げない)
計画の結論・仕様 書き出す先独立した 1 つの文書 決め方書き出して、次の作業はそこから読む
上の行ほど確認が要らず、下の行ほど人が決める。経過は勝手に残してよいが、決めごとに格上げするかどうかは人が決める。1 回の作業でわかったことが、次も通用するとは限らない。

経過は抱えず、結論だけ書き出す

採らなかった案経過も全部覚えたまま、次の作業へ進む

調べたこと、試して駄目だったこと、途中で捨てた案は、そのつど記録に書き出す。覚えておくためではなく、頭から手放すために書く。

経過を抱えたまま次を判断すると、捨てたはずの案に引きずられる。これは人でも AI でも同じで、結論だけを持って次へ進むほうが、判断が正確になる。

直した記録は、1 つの計画につき 1 ファイル

採らなかった案直したファイルごとに記録を残す

何を直したかの記録は、1 つの計画につき 1 ファイルにまとめる。書くのは、触ったもの、何をどう変えたか、なぜ必要だったかの 3 つ。終わらなかったことがあれば、「残り」として書き足す。

直したファイルごとに残すと、1 つの狙いで入れた変更が、ばらばらの記録に散ってしまう。後から読む人は、何を変えたかではなく、なぜ変えたかを知りたい。狙いの単位でまとめておかないと、それが読み取れない。誤字の修正のような軽いものは記録しない。何でも残すと、記録があること自体に意味がなくなる。

これからやることは 1 か所に集め、終わったら外へ移す

採らなかった案やること一覧に、終わった内容もそのまま残していく

これからやることは 1 か所に集め、まだ手を付けていないものを必ず上に置く。1 件は数行まで(深刻さ、何が問題か、どこの話か)。終わったら、結果や詳しい中身は一覧に書かず、日付つきの記録へ移して、一覧にはリンクだけを残す。

優先するのは、控えている仕事を埋もれさせないこと、この 1 点。終わったものの説明が増えるほど、まだ手を付けていないものが下へ押し流される。誰も読み返さなくなった一覧は、役に立たない。

検査は「毎回は軽く、節目は深く」の 2 段にする

採らなかった案毎回きちんと深く調べる

コードを直したら毎回、軽い点検を通す。入力の扱い、権限まわり、外部との通信、秘密の値、ファイルやコマンドの実行など、危ないところに触れた変更のときだけ、セキュリティの点検を加える。関係のない変更(文章だけ、設定だけ)では飛ばし、飛ばしたことを書き残す。

深く調べる検査は、節目に人が起動する。毎回やらないのは、手間の問題だけではない。毎回のように警告が出る検査は、そのうち検査ごと無視される。軽い点検を「気づいたらやる」に任せないのも同じ理由で、任せておくと、忙しいときに抜け落ちる。

08

決めきれていないところ

良いことだけを書かないための欄。この決めごと自体に、まだ埋まっていない穴が 3 つある。

守れたかどうかを、あとから確かめる方法が無い

ここにある決めごとのほとんどは、何かをしなかったことで守られる。推測で進めなかった。まとめて聞かなかった。整えてから出さなかった。しなかったことは記録に残らないので、守れた回数も、破った回数も数えられない。

数えられる形に変える案は採らなかった。たとえば「報告に必ず 3 行を入れたか」で数えると、3 行を書いただけで中身の無い報告まで「守れた」と数えてしまう。数字が出るぶん、そのほうが危ない。

決めごとが増えるほど、互いに食い違いやすくなる

「要点に絞る」と「知っているはずで省かない」は、書くたびにぶつかる。前者は削れと言い、後者は足せと言う。いまは「後者を優先する」と順位を書き足して収めているが、この収め方は、ぶつかる組が増えるほど効かなくなる。

ぶつかっている組を見つける仕組みは無い。書いた本人が、両方を思い出したときにしか気づけない。

このページと手元の原文がずれても、誰も気づかない

原文を直して、このページを直し忘れても、機械は何も言わない。2 つの文章が同じことを言っているかを機械で検査する案は、採らなかった。機械で捕まえられるのは節を丸ごと消したときだけで、中身の書き換えは捕まらない。事故の本体は、この書き換えのほうにある。

しかも検査が通ると、「揃っている」という間違った安心だけが残る。機械が見たという安心は、人が見なくなる言い訳になる。そこで代わりに、このページの根拠を原文ではなく、日付つきの作業記録に置いた。過去の記録は、原文を直しても変わらない。

09

このページの出どころ

同じ決めごとが、役割の違う 3 つの形で存在する。読む人に向けて書いたのは、このページだけ。

手元の設定文書

AI に毎回読ませている原文。同じ決めごとを、AI がそのまま従える形で書いてある。

道具の名前・置き場所・接続先が入るので公開していない

このページ

同じ決めごとを、読む人向けに言い換えたもの。採らなかった案を必ず添えてある。

手元の環境の話は 1 つも書いていない

日付つきの作業記録

いつ何を直し、そのとき何を測ったかの記録。決めごとがなぜ生まれたかは、ここでたどれる。

このページの実測はここから引いている

設定文書を読む人向けに言い換えたのがこのページで、日付つきの実例は作業記録から引いている

3 つのどれがずれても、機械は気づかない(第 08 節)。だからこのページでは「いま何件ある」とは書かず、日付を添えた過去の実測だけを載せている。
決めごとは、正しいから守っているわけではない。迷ったときに、毎回考え直さずに済むから守っている。だから、決めごとの理由のほうが変わったら、決めごとも変える。そのときは、このページも一緒に直す。

出典は、作業のたびに残している日付つきの記録。数字はすべてその時点の実測で、あとから測り直していない。

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